異世界で学校の王子様が奴隷になっていました



奴隷の目に当てられていた上質な布が取られ、その目があらわになった。




――――その漆黒の目が。




思わず息を飲んだ。その懐かしさにたまらなくなったし何より、彼なのだ。



なんとも不思議なものが足元から登ってくる感じがした。



たくさんの感情が混ざりあってどうにもならなくなっていたのかもしれない



優斗先輩が戸惑いながらも視線を上げ、私を見て瞳を揺らせる。



―その瞬間、ふっとある考えが浮かんできた。




彼の僅かに怯えた目を見て浮かんでしまったのだ。



前世の私なら悪魔の囁きとでも言うのかもしれない。


しかし今の私はご覧の通り周りにチヤホヤされたおかげで性格がねじ曲がっているのだ。


自覚はある。


そしてこのねじ曲がった性格で思い浮かんだことがろくなことのはずがない。


(彼は今奴隷だ、そして私は公爵令嬢。彼を買えば彼の全てが私のモノ、私が何をしようと誰にも何も言われない、!)



この国では奴隷の待遇は決していいとは言えない。この国では奴隷は主人に

何をされても抵抗できるすべはない。



ぞくぞくと先程とは比べ物にならないくらいの何かが登ってくる。

あえていうなら、そう



――快感のような




「買おう」

「はいっ?」



何やらほうけていた黒服が聞き返してくる。



「買うと言っているんだ。この奴隷は私のもの」

「か、かしこまりました」


普段表情を崩さなそうな男の顔が歪んでいる、そのことに何故かと疑問は持ったがそんなのは直ぐに忘れてしまった。


優斗先輩――優斗の顎に手を添え顔を上げさせる。


そうするとやはり彼の顔が整っているのが分かった。顔色が多少悪いがそれ
以外は健康に見える。


それにほっとしながら手を離すと優斗の強ばっていた体から多少力が抜ける。



それを見ると牢を出るために立ち上がった。




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