夜の帳
名古屋の夜の繁華街、


錦の違法駐車は、


ひと頃の様に歩道まで


ではないにしろ、


客待ちのタクシーが


擦れ違える程度に、


整然と並んでいた。


雑居ビルのエントランス


ホールでボーナスの


一割程度を懐にした


サラリーマンの酔客達に


深いスリットの入った


白のチャイナドレス、


銀の刺繍は虎と龍、コルネ


パンを模した名古屋巻き、


5割増の睫毛にセルロイドの


人形を思わせる化粧の淑女


がニコヤカに深々とお辞儀


をしていた。


その脇を抜け、擦れ違い様に


チャイナドレス越しの尻を


目の端で追うと、ウエスト


から腰骨の緩やかなライン


の向こうで正面の客に見えな


いように女が、小さく舌を


出すのが覗き見えた。
< 2 / 15 >

この作品をシェア

pagetop