夜の帳
黙ったまま、白くクビレた


後ろ姿を無遠慮に眺めて


いると、無言の同乗者に


いらだったのか、


軽い溜め息混じりに


虎と龍の刺繍がこちらを


向いた。


「カッパちゃん?」


小さくうなずくと、


女の眉間の皺は、


目尻に薄っすらと


年齢を感じさせる


ものに置き換わり、


更にみるみる深く


刻まれ始めた。


仮面をはずした、


幼馴染みで下町育ちの


バツイチ女は、


たわいもないことを


言いながら、


馴れ馴れしく何度も


フルスイングで


人の背中を叩き、


鈴の音と伴に、


皮張りの扉の奥に


キャッチ客を招き入れた。



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