夜の帳
「ほんでさぁ、カッパ

ちゃんに似た男が小倉に

おったって言っとったん

だわ。」


女はカウンターの向こう


から、しゃべり続けている。


「それもさぁ、競馬場に

おったってゆぅんだよー、

たあけらしいでかんわぁ。」


耳が少し悪いせいか酒に


焼けた声がこじんまりした


店の割にはかなり大きい。


本人は気にもしていない


ようだし、おかげで


後ろのボックス席で


カラオケに興じている


一団の大騒ぎも彼女の


話の邪魔にならない。


仮に話を所々聞き逃した


としても、まったく


差し障りはないのだが。

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