夜の帳
「先週だったでしょう、

亜紀ちゃんが来てくれた

の?」


傍らでグラスを磨いてい


た、ビルちゃんと呼ばれ


ている男に同意を求め


女が振り向くと、大き


な腹を吊バンドとワイシ


ャツで押さえ込んだチーフ


は曖昧な笑顔でチラッと


こちらを向き、すぐに


またグラスを磨きだした。


ビルちゃんの反応に


満足した女は、


なをもしゃべり続ける。


「私はさぁ、カッパちゃ

んがさぁ競馬場なんかに

行くわけないがね、違う

ってってゆったんだわ。」


「女と一緒だったってゆ

ぅんなら判らんでもない

けどさぁー、そうでしょぉ。」


独り合点してクスクス


笑うとグラスを煽り、


バランタインのボトルに


手を掛けキャップを回し、


なみなみと注ぎ込んだ。

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