夜の帳
入り口の扉の鈴が鳴り、


条件反射のように


「いらっしゃいませ。」


と言うと同時に女が


視線を上げ、新らたな


客に仮面を付け目配せ


でチィママに指示を出し


カウンターを抜け出した。


潮時だ、ビルちゃんに


チェックのサインを出し、


携帯を見るとまだ0時前、


中途半端な時間だが、


これ以上付き合わされる


のは御免だ。


井戸端会議に疲弊した


耳と相槌に飽きた首を


撫でながら、請求を待つ


も一向に来る気配がない、


ビルちゃんを睨むが


知らぬ振りだ。


小さく溜め息をついて、


薄くなった水割りを煽った。


閉店にはあと二時間もある、


ついてない。

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