嘘つきお嬢様は、愛を希う
やっと人だかりがなくなって安堵した刹那、理月にぐいっと腕を引かれて身体が大きく傾いた。
慌てて体勢を整えようとした私の肩を片手で受け止めながら、理月は私にだけ聞こえる声で囁いてくる。
「お前も学校にいる間は俺から離れんじゃねえぞ」
「え……っ?」
「怖ぇ思いしたくないんだったら、黙って俺の言うこと聞いとけっつってんだよ」
ふっとわずかに耳朶にかかる吐息に、ぞわっと全身の産毛が逆立つような痺れが走って。
反射的に理月を押し返した私は、ひどく混乱したまま耳を抑えた。
「わかったな?」
「っ……わ、わかったけど」
あんな突っ放した言い方したくせに念を押してくる理月の瞳はやけに真剣で、素直に頷いてしまう。
そんな私たちをこっそり見ていたらしい生徒たちが、なにかコソコソと耳打ちしあっているのが視界の端に見えていたけれど。
……気にしている余裕もない。