嘘つきお嬢様は、愛を希う
曖昧に笑い返すことしか出来ずにいると、
「桐乃」
ふと、自分を呼ぶ声が聞こえて。
──思わず、
弾かれるように顔を上げた。
眉間にシワを寄せてつかつかとこちらへ戻ってきた理月を、私はぽかんと口を開けて見上げる。
「マヌケな顔してんじゃねえ。……ほら、行くぞ」
「…………」
なに、それ。
……なんなの、それ。
なんで今……私の名前、呼んだの?
「バカ理月……」
ドキドキしている心臓から目をそむけながら、私は詰まりそうになった息を吐き出した。
私のことなんか、どうでもいいくせに。
……面倒だと思ってるくせに。
たまに思いもよらないことをしてくるから、困る。