嘘つきお嬢様は、愛を希う
「アホみたいな面してねえで、お前にはまだ仕事が残ってる。もうすぐ瀬良と風汰が来るから後処理を手伝ってやれ」
「りょ、了解っす。あの、俺……」
私と理月を交互に見てしゅんと肩を落とす天馬は、責任を感じているのか悔しそうに唇を噛み締める。
たしかに理月が来なければ危なかったけど、天馬が悪いことなんて何一つないのに。
けれど、焦った私が声をかける前に理月が動いていた。
「ばーか」
がしがしとかき混ぜるように天馬の頭を撫でた理月は、珍しく優しさをまとった目で小さく微笑んだ。
「お前が凹むようなことじゃねえ。事を軽視して、お前らだけで帰らせた俺の判断ミスだ。悪かったな」
「っ……!」
あ、謝った……!?
あの理月が謝った!?
初めて見る理月の表情と、信じられない言動に私は目を白黒させて後ずさった。
すると、まだ酸素が完全に戻ってきていなかったのか、ふらりと目眩に襲われてよろけてしまう。