嘘つきお嬢様は、愛を希う
甘えたくない
◇
「予想していたよりも早かった、ってところか」
下校途中に思わぬ奇襲を受けた晩、いつもの幹部室にて幹部会議が行われた。
参謀担当の櫂さんの疲れたような呟きに、天馬が戸惑いを含んだ瞳を揺らす。
「早かったどころじゃないっすよ。桐姉が華鋼のヤツらとやりあってから一日しか経ってねぇのに」
「全面戦争間近のこの状況で、うちに弱点があるとわかれば狙ってくるのも頷けるよ。向こうにとっちゃ、昨日のは願ってもみない収穫だったんだろうね」
櫂さんの代わりに答えた風汰先輩は、言葉通りに神妙な顔をしながらも、手元では洗い終わったお皿をせっせと拭いている。
器用だよね、風汰先輩は……。
手伝いますね、と進み出ながら、私は今日の出来事を思い出して小さくため息をついた。
分かってはいたことだけど、ここには『平穏』という言葉はないのかもしれない。