嘘つきお嬢様は、愛を希う


ちょっと待ってよ。


この人、いったい何者なの……?


前代の雅さんよりもずっと立場が上なのか、それとも理月が個人的に敬わなければならない人なのかはわからない。


けれど、それはどう考えても異様な光景だった。




「ほら、びっくりしちゃってるじゃない。……ていうか、話には聞いてたけどずいぶん雰囲気が暗いのね。あたしがいた頃はもっと騒がしかったのに」


「まぁ、あの頃は少し騒がしすぎた気がするけど」



雅さんは一呼吸おいてサリさんの横に並ぶ。



「こちら、雫井咲鈴。俺の彼女──で、婚約者」


「……こん、やくしゃ」



そこは言わなくても、と恥ずかしそうに雅さんを小突くサリさんは、正直私とそんなに歳が離れていないように見えるのだけれど。


そんな私の心を読んだのか、不意にこちらを向いたサリさんがどこか複雑そうな顔で頬をかく。



「あたし、これでも雅と同い歳だからね」


「ちなみにその雅は俺と同い歳で22だ」



すぐさま補足した櫂さんを恨ましげに見て、サリさんは深くため息をついた。

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