嘘つきお嬢様は、愛を希う
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物心ついた時から、私には自由なんてないのだと悟っていた。
それが当然とばかりに思っていた。
いわゆる富豪層が通う一貫校に入学後、教養のついた子どもばかりが集められる場所で学ぶことは全て、定められたレールからはみ出さないようにするためだった。
「──私の父は、椿グループの代表なんです」
「椿グループ……ってあの? トップ企業の?」
私は小さく顎を引く。
「父は自分の子どもに後を継がせたかった。だから私たちは、グループの代表に相応しい器になるように、小さい頃から色々なことを仕込まれました」
けれど、ふとフタを開けてみれば、父の思い描いていた理想はそこにはなかったのだ。
「……サリさん、私と天馬、似てると思いますか」
「え?」
「たとえ半分しか血が繋がってなくても……私たちが姉弟ってちゃんとわかりますか?」
虚をつかれたように、サリさんはその大きな目を見張った。
驚くのも無理はない。
こうしてハッキリ言わなければ分からないくらいには、私と天馬は似ているから。
顔も、性格も、雰囲気も、考え方ですらも。