嘘つきお嬢様は、愛を希う


「よくある話なんですけどね、不倫なんて」



苦笑を滲ませながら、私は少し乱れた呼吸を整える。



「……血が繋がっているのは?」


「母親です。天馬には父の血が流れてない。それが発覚したのは五年前で……同時に父と母は離婚しました。私の親権は有無も言わさず父になったけど、天馬は母親と出ていくことになって──」



引き離された私たち姉弟は、それから数年、一度も顔を合わせることなく別々に暮らした。



「両親が離婚する前、父に反抗した母が私と天馬を連れて家を出たんです。……その時からかな、私がこの世で生きていくことを苦しいと思い始めたのは」



知らなければ良かった。


何度そう思ったかわからない。


知らなければ、こうして欲張ることだってなかったのにと。

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