嘘つきお嬢様は、愛を希う
「……羨ましかったんです。どこかで母と自由に暮らしている天馬が」
「桐乃ちゃん……」
「味方なんていませんでした。父は仕事のことしか考えてないし、家にもほとんど帰ってこない。あげく、母のことがあってから私の行動にいちいち敏感で、本当に自由なんてものはどこにもなかった」
毎日がまるで闇の中にいるみたいに真っ暗だった。
ほんの一時、母と天馬と過ごした籠の外の世界は、あんなにも楽しかったのに。
あんなにも、自由だったのに。
「だけど二年前、母が突然亡くなったんです」
「……亡くなった?」
「交通事故で、ほんとに突然。ショックでした。でも、ほんの数年のうちに天馬が私の知る天馬じゃ無くなっていたことも、それなりにショックで」
従順で一切口答えもしない代わりに、表情の変化も乏しいただのお坊ちゃまだった天馬が様変わりしていた。
口調も、見た目も、態度も。
今考えてみれば、あれは反抗期真っ盛りの時期だった。