嘘つきお嬢様は、愛を希う



「父のもとに引き取られるはずだった天馬は、それを拒否しました。俺はもうあんたの子どもじゃないって突っぱねて……」



もちろん、そんなわがままが通用するような人じゃない。


まだ義務教育を受けなければならない中学生の子どもには、どうしたって保護者が必要だから。


だけど天馬は、どうしても嫌だと言い張った。


一人で生きていくと、そればっかりだった。



「譲る気はなかったんでしょうね。あの子は」



このままだと埒が明かないと思った私は、姉としての最後の役目だと自分に言い聞かせて、父を説得したのだ。



「──父と取引をしたんです。そうして決まったのはもはや一本筋に定められた私の未来と、天馬の自由でした」


「どうして……」



それがたった一つの選択だったから。



「天馬が外に出て生活に困らない分のお金を私に預ける代わりに、天馬の動向は私が監視する。そして機さえあれば家に連れ戻し、今度こそ後継ぎの器を作る。それが高校のうちに出来なければ、私を早々に嫁に出して新たな後継ぎを生ませる。単純明快でしょう、ある意味」


「……つまり、桐乃ちゃんにはもう後を継がせないと?」



そう、そういうことだ。


さすがにサリさんは察しがいい。

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