嘘つきお嬢様は、愛を希う
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優しさも、温もりも、きっとずっと憧れていた。
でも、それは決して簡単に手に入らないものだとわかっていた。
そこらじゅうにありふれていながら、そうと自覚して掴むことがどれだけ難しいのかもわかっていた。
だからこそ、その憧れていたものが目指すものを隔てる壁になりそうならば、私は迷いなく、手を引く。
掴もうとしていたものも、もう少しで触れそうだったものも、私の中で生まれたそれらの感情も、なにもかも手放して。
……その覚悟を、私は、持っていなければならない。
「じゃあ、また時間が出来たら顔出すからね」
「わざわざすみませんでした。サリさん」
「別にいいよ。それより、あんまり油断はしないこと。こっちでも玲太に情報は探らせておくけど、最近はどうもきな臭いことが多いから」
総長自ら見送りに出た理月に、サリさんは少し困ったような顔で眉尻を下げた。
ちらりとこちらに視線が向く。
心配そうな、まるで迷子の子犬を見ているかのような、とても優しい心を持つ人がする瞳。