嘘つきお嬢様は、愛を希う
知られたくない
◇理月side
ガチャン、
と小さな音を立てて閉まった扉の音を受け止めて、俺は疲労のこもった息を吐く。
混乱していた様子の桐乃の顔が見えなくなったからか、内に生まれていた妙な焦りが少し収まったような気がした。
「……見た目に似合わず、ずいぶん過保護なんだな」
そんな俺を横目に見ながら、雅さんが微笑を浮かべる。
「別に……。部外者に内部事情を漏らすわけにはいかねえってだけですよ」
中性的で、その奥深くに闇をまとわせた隙のない顔は、何度見ても背筋がひやりとするものがある。
前代の総長4人のなかでも、色々な意味で雅さんが一番危ういのだ。
きっとサリさんがいなければ、あの人は今でもずっと総長の座から退かなかっただろう。
そんな人に言われたくねえ、というのが本音だが、さすがの俺でも前代の総長相手に下手な対応は出来ない。