嘘つきお嬢様は、愛を希う


「天馬、なるべく詳しく状況を説明しろ」


「う、うす」



まあこの小生意気な天馬に関しては、とある事情と野生の勘のみで幹部に選んだだけのこと……


だが、とりあえず度胸だけは一人前だと認めている。



「……えっと、俺と桐姉は総長の指示でふたりで帰ってたんすけど。その途中で突然現れた華鋼のヤツに襲われて」


「それは待ち伏せしてたのか? それともお前らを追っかけて現れたのか?」



鋭く切り込む櫂さんに、天馬は複雑そうな顔をする。



「どちらかといえば、待ち伏せな気がするけど……。でもそれだとおかしくないっすか? もともとは総長と帰る予定だったのに、アイツらは桐姉と一緒にいるのが俺だって分かってるみたいだったし」


「ふむ……確かにな。情報が回るのが早すぎる」


「しかも総長のところに足止め要員を放つ計画性もあるじゃないっすか。まあ弱かったみたいっすけど……」



ちらりとこちらを気にする天馬に「ああ」と会釈してから、俺は昼間のやつを思い出す。

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