嘘つきお嬢様は、愛を希う


「まったく見苦しいな。自分の族をあれだけ簡単に殲滅させられておきながら、なおもこの世界に身を置くとは」


「……あの頃よりもさらに粘着性とウザさが増してるあたり、なおのこと永遠の闇に葬りたくなるけどね」



苦虫を噛み潰したような顔で雅さんが毒づく。


そんなふたりの様子を窺いながら、おずおずと天馬が声をあげた。



「あの、龍靭ってのは確か一昔前にあった族のことっすよね?」


「うん、俺が総長だった頃のね。当時の龍靭は華鋼の傘下だったけど、ある時ひとりの女の子にサラッと潰されたんだよ」



──伝説の姫。


彼女が……サリさんがそう呼ばれる由縁となった出来事か。


俺も当時はまだ胡蝶蘭のメンバーではなかったし、何があったのか詳しくは知らないけれど。


ただ聞く限りでは、その事件が雅さんの運命を大きく変えて、その後に続く胡蝶蘭の在り方や総長の心得に深く繋がっているらしい。

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