嘘つきお嬢様は、愛を希う


「──それにしても」



静かに、しかしばっさりと空気を切り込むような声を落として雅さんがこちらを見る。



「いくら華鋼とはいえ、ただの女の子にここまで執着するのはおかしいと思うんだけど?」



その言葉にビクッと肩を揺らしたのは、天馬だった。



「……なにが言いたい?」


「確かにこちらの弱みを握れば、ヤツらにとっては有利になるかもしれない。でも、道端でほんの少し絡んだだけの女を利用するほど……総長の女でもない一般人を固執的に狙うほど、あいつらも無駄なことはしないだろ」



ましてや、と雅さんは双眸を鋭く細める。



「華鋼の今の総長はヤクザ絡みだという噂もある。もしそれが本当なら、安易に関係の無い女に手を出すなんて馬鹿な真似はしないはずだ。……つまり、彼女にはなにかしら"利用価値"があるってことになるんじゃない」



ぞわり、と。


背筋を撫でられたかのような寒気が走る。

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