嘘つきお嬢様は、愛を希う
……なんて。
わかってる。
そんなことで、あの人を欺(あざむ)けるわけがない。
だからこそ、今この瞬間を味わわなくちゃいけないんだけど。
「……わっ」
夕焼けから目をそらした刹那、すれ違った人とドンッ!と肩がぶつかった。
「姉ちゃんよぉ、どこ見て歩いてんの」
「いってぇなー。腕の骨折れたかも」
いや、そんなわけないし。
というか絶対今わざとぶつかってきたよね!?
──と思いつつも、もちろん言えるはずもなく、私は後ずさりながら身を縮める。
よそ見をしながら歩いていたのは事実だ。
いくら難癖をつけられているとしても、ここで対抗するのは分が悪い。