嘘つきお嬢様は、愛を希う


返事はない。


……ま、寝てるだろうなとは思ってたが。


そっと扉をあけて中を覗くと、やたらと大きなベッドで小さく丸まりながら眠る桐乃の姿が見えた。



「っ……たく」



とことんこいつの存在は、心臓に悪い。


布団がめくれているのに気づき、俺は起こさないようそっと中へ入ると、桐乃のそばに寄った。


布団を首元までかけ直し、小さく息をつく。


窓のカーテンを閉め忘れたのか、月明かりが一筋差し込む部屋の中で無防備にもスースーと穏やかに眠る桐乃。


ほんの少し開いた口から漏れる寝息が、あまりにもあどけない。
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