嘘つきお嬢様は、愛を希う
「……っ」
私は自分の頭に手を乗せて、熱の溜まる顔を伏せた。
── 一瞬、心臓が止まるかと思ったじゃない。
「桐乃」
しかし甘く疼く熱の余韻に浸る間もなく、キッチンの方から理月が声をかけてくる。
こんな時に名前で呼ぶなんて、もはや確信犯なんじゃないかと思うのだけれど。
「お前さ、胡蝶蘭のことどう思う?」
「……どう、って?」
「そのまま、お前の目に胡蝶蘭はどんな風に映ってる?って意味で」
私の目に、どう──。
何を意図して聞いているのか分からない。
けれど、たぶん理月は私がここにいることに対して負い目を感じていることに気づいているんだろう。
……部外者だ、とか言っておいて。
ため息をつきたくなるのを堪えながら、私はソファに腰を下ろして乱れそうになる呼吸を整える。