嘘つきお嬢様は、愛を希う
「だからありがと、理月」
お盆に温めたポトフと薄めに焼いたフランスパンを乗せて戻ってきた理月に小さく微笑んでみせる。
理月は表情を崩さずお盆を私の前に置くと、おもむろに私の隣に腰をおろした。
「お前はどうなんだよ」
「え?」
「天馬が一番求めてたもんがここにあるなら、お前が……桐乃が一番求めてるもんはどこにあるんだって聞いてんの」
理月の瞳がこちらをじっと見つめてくる。
夜を映したような、深い深い海の底のような、とても強い孤独が宿る瞳。
思えば出逢ったその瞬間から、私はこの瞳に心が惹かれていたような気がする。
ふざけていても、楽しそうにこちらをからかっていても、この瞳の色だけは変わらなかった。