嘘つきお嬢様は、愛を希う
振り返りはしない。
もう、決めたことだ。
なにひとつ、私がいたという痕跡を残さないように。
──なにもかもを、終わらせるために。
深夜の薄気味悪い道をひとり歩きながら、今にも充電が切れそうなスマホを耳に当てる。
しばらくのコールの後、留守番電話に切り替わった。
「……私だけど」
あの人がこれを聞く時、私はもう既にこの世からいないだろう。
それでいい。
私はあの人の思いどおりにはならない。
そして、天馬もあの人の思いどおりにはさせない。
これが私のささやかな抵抗だ。