嘘つきお嬢様は、愛を希う
ぐらり、と。
突き飛ばした反動で身体が後ろに倒れたことに気づいた時、私は無意識に手を伸ばしていて。
「っ──バカッ!」
焦った天馬の手が私に向かって伸びる。
橋の柵を乗り越えて、重力のまま下へ落ちかけた身体を引き止めるように手が触れた。
……けれど、ほんの少し遅かった。
「……だめ……っ」
飛びつくように私の手を掴んだ天馬もろとも、風になぶられるように身体が橋の外へ投げ出される。
──なんで、こんなことに。
まるでスローモーションのように動く景色の中、天馬が空中で私の身体を引き寄せて抱きしめた。
「……!」
なにもかも、呑み込むように。
なにもかも、消し去るように。
──私たちはそのまま、深い深い闇の底に吸い込まれた。