嘘つきお嬢様は、愛を希う
思い詰めた様子で複雑に顔を歪める瀬良と風汰。
一切手を止めることなく情報収集にあたる櫂さん。
修羅場をくぐり抜けてきただけあって、みんな正気を失うほど取り乱したりはしない。
しかし誰ひとり、この状況を簡単に呑み込めずにいた。
「引きこもるようになってから確かに様子はおかしかったけど……さすがにショックだね」
風汰が込み上げる何かを逃がすように溜息をつく。
「ショックどころじゃないわよ。挙句の果てに、華鋼に拉致られるなんて……」
「それに、ただでさえ引きこもっていた彼女が今日この深夜に限って胡蝶蘭を出る──そんな、どう考えてもイレギュラーな行動を知っていたっていうのも変な話だよ」
そう、今一番の問題はそれだ。