嘘つきお嬢様は、愛を希う


心も体も傷だらけで。


深い悲しみと堪えられない怒りと、どうしようもない悔しさが織り交ざった瞳。


それが、まだどこか幼くあどけない顔で揺れていた。


見た目だけは虚勢を張っているが、ここのヤツらに比べたら、こいつはひときわ経験が浅い。


そんな目の前のことしか見れない未熟者。


……まるでいつかの自分を見ているような気がした。


柊真さんに拾ってもらった当時は、きっと俺もこんな感じだったんだろう。


だが、今はそんな泣きっ面をしてる場合じゃねえ。



「はっ……悠長に、か。テメーを幹部にしたのは間違いだったな。呆れを通り越して溜息しか出てこねえよ」


「……くはっ!」



片脚で天馬の腹を蹴り飛ばし、そのまま転がることも許さず胸ぐらを掴み返す。

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