嘘つきお嬢様は、愛を希う


たとえ今すぐ飛び出していきたくても……

たとえ、これが桐乃への裏切り行為だとしても、その信念を曲げるわけにはいかないのだ。


──『総長』という肩書きを受け継ぐ。


それは自分の感情を捨てる覚悟を持つことと同義だから。



「…………すんません」



天馬は今にも血が溢れそうなくらい唇をかみ締めて立ち上がると、ゆっくりと頭を下げた。



「頭では分かってるんだ。総長が桐姉をどうでもいいなんて思うはずがないし……俺らを率いるからこそ、冷静にいなくちゃいけねぇってのも」



でも、と天馬は震える声で続けた。

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