嘘つきお嬢様は、愛を希う
「──消えねぇんだ。川に飛び込もうとしてた桐姉の顔も、桐姉を抱きしめた時の感触も、あいつらに抱えられていく桐姉の後ろ姿も……そんとき感じた絶望も!
……ダメなんだよ。今にも気が狂いそうになる。あそこまで追い詰めたのは他でもねぇ俺だって分かってるからこそ、余計にっ……」
言葉を遮るように、俺はくしゃっと赤髪を掻き回した。
ハッとして驚いたように顔を上げた天馬は泣いていたけれど、俺は触れずに微笑を浮かべる。
「分かってるよ。お前が苦しいのは」
「……っ」
「俺だって同じだ。あいつが自殺しようとするほど思い悩んでたのはわかってたのに、結局止めきれなかったんだからな。……いや、むしろ追い詰めたのは俺か。まったく、どこまでも始末に負えねえ」
戸惑ったように揺れる天馬の瞳は、俺がなにを言っているのか理解できないと訴えていた。