嘘つきお嬢様は、愛を希う
「……一発、お前も殴っていくか?」
「…………いや。俺があいつを殴ったところで何も変わんねぇ。そりゃ許せねぇけど、今は桐姉が先っす」
そう言いながらも天馬は拳を強く握りしめて、指の間から血が滲んでいた。
抗争で前線に出ると感情のまま殴りかかっていっていた頃と比べれば、こう我慢出来るようになっただけ天馬も成長しているんだろう。
それでも、さすがに今回は──。
「天馬、俺たちは先に行く。お前にはこいつの処理を任せてもいいか」
「えっ……」
もしも俺がこいつの立場だったら、絶対にあの男を生かしてはおかない。
今でこそ胡蝶蘭の総長として自我を保っているが、そうでなければとっくにトドメを刺していた。