嘘つきお嬢様は、愛を希う

泣きたくない





ひとつ、気づいたことがある。


生きることは、きっと死ぬよりも大変だってこと。



「……なんだ、起きてたのかよ。桐姉」



ガラッと扉を開けて入ってきた天馬は、ぼうっと窓から外を眺めていた私に目を向けて呆れた声を落とした。



「うん、寝てばかりもいられな……い、し……」



天馬の後ろから入ってきた人物に声が止まる。


どこか不貞腐れた様子の天馬は、目を剥く私の傍らにくると椅子にドカッと腰を下ろした。



「……天馬、どういうこと」


「そこで会った。追い返すわけにもいかねぇだろ」



確かにそれはそうかもしれないけれど。
< 329 / 370 >

この作品をシェア

pagetop