嘘つきお嬢様は、愛を希う
「あんたみたいなやつに私が好き勝手されるわけないでしょ? 調子に乗らないでよ!」
「へえ、口だけは達者だな。さっきは一目散に逃げてったくせに」
いったい何が目的なのかはわからない。
そうは分かっていても、あまりに端正な顔に至近距離で迫られると、それだけで心臓が壊れそうになってしまう。
……でも、負けない。
負けたくない。
こんなヤツの思い通りには絶対なりたくない。
その思いだけで全身から威嚇をぶつけていると、やがて彼ははぁと短いため息をついた。
「──梶谷理月」
そう言いながら起き上がり、まるで何事も無かったかのように綺麗な指先で目にかかった前髪をかきあげる。