嘘つきお嬢様は、愛を希う


服は着ていたものと変わっていない。


ベッドの足元には、私のなけなしの荷物が入っているキャリーバッグが置かれている。


ひとつひとつ状況を把握しながら、霞がかった記憶を慎重に遡っていく。


と、その時、キィと小さな音が響いた。



「あ、ごめんね。起きてたんだ」



びくっと肩を跳ねさせた私に気づくと、扉を開けて入ってきたその人は申し訳なさそうに眉尻をたらして微笑んだ。


見覚えがあるような、ないような。


お日様のような柔らかい色をした髪。


たれ目が印象的な優しそうな顔。


一方で廊下の明かりに縁どられたシルエットは意外にもしっかりしており、その体躯からは鍛えていることがよくわかる。

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