嘘つきお嬢様は、愛を希う
「ちょっ……!」
ひょいっと瀬良さんの腕が離れたせいで、引かれるがままにその胸の中へと顔面から飛び込んだ私。
あまりに突然の事で驚く間もなく、面食らって振り仰いだ私の目に端正の顔が目に焼きついた。
──ドクン。
「あらま」
瀬良さんの面白そうな声が背中に聞こえる。
「ちょ、理月……?」
戸惑って棒立ちしたまま固まる私の声に、理月は我に返ったようにハッとしたような顔をした。
気のせいか、ほんの一瞬だけ息を呑んだようにみえて。
「…………」
「ちょっと?」
今度はいったいどうしたっていうの?
情緒不安定なの?
思わずそう問い掛けそうになったものの、理月はなにか煩わしそうに前髪をかきあげて背を向けた。