嘘つきお嬢様は、愛を希う
「……瀬良。こいつにあんまちょっかいかけんなよ」
私の声には答えずぼそりとそう言い放ち、理月はそのまま無言で部屋を出ていこうとする。
呆気にとられていた風汰先輩が慌てて呼び止めた。
「どこ行くんだ?」
「ねみぃから寝る。夕飯はいらねえから」
振り返ることなく言い捨てた理月は、荒々しく音を立てて本当に部屋を出ていってしまった。
シン、と静まり返る空間。
なんとも言えない空気が流れる。
最初に沈黙を破ったのは櫂さんだった。
「これはまた興味深い。面白いことになりそうだな」
「同意だわ。しかしまあ、初心ねぇ。不器用な総長さんのはじめての想い……ってやつかしら?」
「ま、絶対本人は気づいてないけどね……」
顔を見合わせた櫂さんたち三人は、困惑する私を見ておかしそうに笑う。
な、なんなの?
どういうこと?
隣で呆然と「マジかよ」と呟いた天馬の服の裾を引っ張って引き寄せる。