暴君と魔女
「1か月前に・・・死んじゃったんですよね」
涙を流して声を震わせながら笑う彼女。
さすがに揺らいだ心が締め付けられる。
泣くほどまだ傷の癒えていないそれを強引に吐かせた自分の横柄さに不可抗力でも後悔して息を吐く。
後味悪い・・・。
「・・・・その子は・・・今どうしてる?」
「今は親しくなった元燐人のおばさんに預けて・・・・」
「・・・そ、じゃあ・・・行くか・・・」
そう呟いて立ち上がると、事情を把握できないらしい彼女がソファーに座ったまま俺が立ち上がって歩き出す様を見つめる。
一向に動かない女を振り返って眉根を寄せると「立て」とばかりに誘導する。
「お前が先に進まなきゃ場所が分からん」
「はっ?あの・・・?」
「・・・・・買ってやる」
「はっ?」
「いや・・・違うか。まずは・・・2度の命の恩人への謝礼か・・・・」
「ご、ご飯頂いてますが・・・・」
「アホか・・・俺の命はそんなに安いもんじゃない」
そう言ってスッと目を細めて口元に弧を描く。
そのまま今歩いた足を戻し彼女の前に立つと顎に指先を走らせグッと顔を自分に向けた。
グレーの色身が俺を捉え、ゾクリとする神秘さに鳥肌が立った。
口を開かなければ充分な魅力を感じる彼女。
「よかったなぁ・・・気紛れに助けた命が一生遊べるほどの収入に繋がって」
「あ・・の・・・・」
「お前・・・今日から俺の専属になれ」
「・・・・せ、専属?」
「俺の傍にいて、そのお前には不相応で利用価値のない力を俺の為に生かせ・・・・」
彼女の美しいグレーが驚きに染まる。
「それは・・・・・ごはん食べ放題ですか?」
「黙ってろ馬鹿女」
そう、彼女は口を開かなければ神秘的なんだ。
コレが俺が四季を傍に置くようになったきっかけ。