暴君と魔女
「・・・・何ですか?」
「・・・・・・睫毛が気になった」
「・・・はぁ・・?触りたくなったと?」
「・・・・・本当はその眼にも触ってみたい」
「・・・・・・・・恐いです望様」
本気でされると思ったのかしっかり目蓋に力を入れた四季に噴き出して小刻みに笑うと体を起こす。
ゆっくりと重なっていた体を離していき、程よく作用する倦怠感にその身を支配されベッドに沈んだ。
それとは反対にその身を起こした四季がどこか気だるそうな、寝起きともいえる表情で自分の体に視線を走らせる姿が妙に色気を孕んで。
乱れた髪の毛を白い指先で適度にとかす姿に見惚れて見上げる。
しばらく絵になる様なその姿に見入って、そして気になって後回しにしていた事を思い出す。
「・・・・・・なぁ、お前・・・・歳いくつだ?」
今更すぎる確認。
雇った段階で聞くべき事だったと思うのに、あの時はその能力にしか興味が無く個人情報を蔑ろにしていた。
俺の言葉に視線をゆっくりと移した四季が小さく口の端を上げると答えを口にする。
「・・・・・22です」
「・・・・・・・5つ下か」
反芻するように呟いて、その年齢を確かめるように四季の腕に指先で触れる。
白く滑らかな肌は言われた通りの年齢の物なのだろうと感じ、一通りその肌の感触を確かめると指先に力を込めて四季を引き寄せる。
バランスを崩し倒れ込む形になった四季を自分の腕の中に引き込み抱きしめて。
その柔らかさと熱に満足して目蓋を閉じた。
「・・・・・望様?」
「・・・・・・・・・・乱暴にして悪かったな」
「・・・いえ、・・・でも、その後は優しくして下さいましたから・・・・」
「・・・・・・・・恐く・・・無いか?」
強く、きつく抱きしめたのは・・・・なんとなく顔を見られたくなかったから。
多分・・・どこか嫌われたくないという自己防衛。
今まで散々な扱いをしてきた奴が今更だと言われるのも恐くて、
だけど・・・・相手は四季だった・・・・。
俺の不安を読んだのか、スッと背中に回った手が優しくて。
指先から伝わる熱に力が抜けた。
緩んだ腕の中で俺の顔を覗き込むように顔を上げた四季がグレーの瞳を揺らして微笑む。