暴君と魔女
「・・・・望様が恐いと思った事なんて・・・一度もありません・・・・」
「・・・・・・よく言うな・・」
フッと力なく笑って四季の頬に張り付く髪の毛を取り除くと、その手に華奢な指先が絡んで力とも言えない様な力で誘導する。
不意に掌にかかった四季の息。
熱いと感じるより早く触れた唇の感触にドキリとし、自分の指の隙間から覗く伏せていた四季の目蓋がスッと開いて俺を見る。
長いまつげがグレーに重なる。
「・・・・本当です」
声の響きを掌で感じ、ゾクリゾクリと鳥肌が立つ。
性感帯ではないと思うのに酷く感じた。
そしてじっと俺を見透かすように見つめるグレーに体が熱くなる。
そうだ・・・この目に惹かれて・・・・、
「・・・・・よかった・・・」
不意に響いた四季の安堵の声と広がる笑みに意識が引かれた。
「・・・・何だ?」
「いいえ、・・・・・明日も望様はお元気そうだと思って」
クスリとどこか嬉しそうに微笑んだ四季が、困惑している俺の頬をその手で包むとスッと顔を近づけ、鼻先が微かに触れる程まで寄ったところで僅かに離れる。
「・・・あの・・・キスしても?」
アホか・・・・、
ここまで気を持たせてその駆け引きの焦らしは何なんだよ。
ああ~・・・、
くそっ・・・
酷く不本意で不愉快だが・・・・・、、
・・・・・・可愛いな。
「・・・・・・したら・・・また抱くけどいいのか?」
淡々と真顔でそう切り返してみれば、うっと押し黙った四季が僅かに身を引いたのに苦笑いを浮かべ。
すかさず頭に手を回すと強引に引き寄せて唇を重ねた。
「ーーーーーっは・・・、逃げようとしてんじゃねぇよ馬鹿女」
「も、もう無理ですっ・・・、体ギシギシでっーー」
「辛かろうが奉仕するのが【仕事】だろ?【俺の為】にしっかりその身を犠牲にしてくれるのがお前の本分だったな」
はっきりと四季の言葉を引用して悪どい笑みで四季を射抜けば、悔しさと羞恥で赤く染まる四季がなかなか言葉の出ないらしい口を無意味に動かす。