暴君と魔女
全て見透かしてみろと彼女に挑んで見つめ返すと、目を僅かに細めた彼女がスッと唇を動かすと言葉を紡いだ。
「・・・・・眠そうです」
「・・・・あっ?」
「・・・・・多分・・・3日はまともに睡眠を取られてないですね?」
「・・・・そんなのいつもの事だ。寝なくても支障は無い、俺が聞きたいのは・・・」
「駄目です!」
俺の言葉なんて聞く耳持たず。
突然行動的になった彼女が俺の用意した彼女専用の部屋を俺の腕を強引に引いて横切って歩く。
引かれるまま突如の行動に従っていれば、ベッドルームの扉を勢いよく開いた四季が俺をそのベッドに突き飛ばす。
客用のベッドのパリッとしたシーツの感触を感じながら、不機嫌に眉根を寄せると突き飛ばした四季を振り返る。
天下の大道寺のトップを突き飛ばした馬鹿女を。
なのに彼女ときたら腕を組んでこれ見よがしに怒った表情を作り出す。
全く畏怖出来ないそれに負けじと声を響かせた。
「おい、雇い主にいい度胸だな・・・」
「雇い主様だからこそ体を壊されては困ります!!さぁ、布団に入ってお眠りください!!」
「だから・・・眠くないって・・・、元々不眠症気味なんだよ」
そう言って体を起こしてベッドに座り直す。
それでも首元の堅苦しさにネクタイを緩めシャツのボタンを2つほど開放した。
しかし、こうやってベッドに座る事も久しぶりだと頭で思った瞬間に強引な力で背中にベッドのスプリングを感じる。
驚いた俺が仰いだ物と言えば・・・。
客間の天井をバックに俺を見降ろす怒った表情の四季の姿。
そして・・・重み。
馬鹿女に押し倒された・・・・。
「おい、何大胆な事してくれてんだ・・・」
「望様が言う事聞かないからですよ!ちゃんと目を閉じて眠ってください!」
「だから・・・」
「子守唄なら私自信が・・・」
「ぶっ殺すぞ馬鹿女・・・・」
これまた自信満々に胸に手を当てた四季が「子守唄」とか口にするから溜め息をつく。
やめろと牽制したというのにスッと俺の上からどくと息を吸ってからその声を響かせる彼女。
「だから、やめ・・・」
発した言葉は静かに消えた。
代わりに響き続ける四季の声に一気に引き込まれて聴き惚れた。