暴君と魔女
必死に握り、何度も自ら使用したのは最初の2日。
3日目からは鳴りだすそれに反応して、
鳴っていない時でも鳴っている気がして確認した。
そして今は・・・・・。
文明の利器も・・・・電池が切れればただのガラクタだと冷めた視線で見つめてから目蓋を閉じた。
窓から入りこむ風がふわりカーテンで遊んで部屋の中に風を巻き起こす。
すでに床に散らばっていた書類を巻きあげて、空中に舞ったそれがひらりひらりと落ちて違う位置に広がっていく。
今は・・・・・、あれから何日目なんだ?
不意によぎった疑問。
指を折って数えればすぐに出そうな答えだというのに、それすらも思考する事の出来ない頭で、自分の惨めさに小さく笑って再び目蓋を閉じた。
窓際の壁に寄りかかり、床に座り込んでもうどのくらい時間が経ったのか。
食事は・・・いつが最後だった?
まともに寝た記憶すら危うい。
かろうじて水分を取っても体が全てを拒絶し吐くを繰り返す。
ゆっくりと死に向かって生きている様なものだと肝心な事で働かない頭が打ち出して。
このまま消えた方が楽だとも狂気的な思考まで浮上した。
今までだって、家の事で追い詰められても死にたいとは思わなかった。
どんなに体を蝕んでも立っている事が出来た。
なのに・・・・・、
立つことさえままならない。
立ち方すら・・・・忘れてしまった。
いつの間にか寄りかかって、その体重を預けていた物を失って。
崩れた足元で動けなくなった。
「・・・・どこに・・行った?」
呟いて、続けて呼ぼうとした名前すら口に出来ない。
呼んだら、どうしようもない喪失感で更に自分が沈むのが分かっているから。
泣きたいくらい苦しいのに流す涙すらないほど乾いた体。
でも自分の体が本当に求めるのは水ではなく。
それでも、水の様に当たり前で、
水の様に生きるのに必要だった存在。