暴君と魔女
「・・・様?」
「望様ーーーーー」
呼ばれて我に返ってその目を捉えた。
透き通る様なグレーの瞳。
その眼が俺を映して僅かな不安を表情に浮かべる。
「どうされました?具合でも?」
「ん、いや、考え事してただけだ。いいから続けろ」
そう言って手にしていた書類片手に彼女のやるべき仕事を促して見つめた。
まだ少し俺に不安を浮かべる彼女が、それでもスッとその目を切り替えると俺と同じ書類を手にして俺を見つめる。
あの見透かされる様な視線で。
「この会社は?」
「・・・・ここは・・・・安定してます。きっと望様には利益になる筈」
「じゃあ・・、次は?」
「・・・・・あまり・・・相性良くは感じられません。どこか・・・悪意も見え隠れする」
「利益的にはどうだ?こちらが上手くまわれば悪意なく実績を得られるか?」
「・・・・・深いところまでは分かりません。私に分かるのは・・・望様にそれがどう絡むかくらいしか・・・・」
「じゃあ、大ざっぱでいい。ここと付き合って俺が破綻する様な事は?」
「・・・・・無いと・・・思います。望様根本を揺るがすほどの悪意ではないかと・・・・」
その言葉を聞きその社名に△の印をつける。
こうして、最近は四季の意見を聞き澄まし自分の仕事の効率を上げる。
勿論、四季に持ち込むまでは自分であらかじめ絞り出した物を。
そして更に四季の意思を聞き最終決定を下す。
仕事を終え家に戻ると四季の部屋に向かい書類を並べこんな事を繰り返すのが日課になっている。
それが彼女の仕事。
俺が彼女を買った唯一の理由。
堅苦しい文字の羅列を眺め、一通り彼女の【お告げ】を聞き入れると不必要な書類は床に放った。
それを秋光が拾い上げ何やら絵を描いたり折ったりするのをチラリと視線を走らせ見つめる。