暴君と魔女
暴君と魔女の出会い
自分の髪を掠って足元に落ちた物に一瞬思考が停止して、すぐに再起動するとゾッとする。
粉々になっているのは陶器製のプランターで一歩間違えれば直撃だった。
だけどもそんな事に怯えるのも程々に、くるりと向きを変えるとうっすらと覚えている姿を求め視線を走らす。
少し離れた場所にその姿を捉えるとこちらに向かって歩く人並みを掻き分け進んで。
その後ろ姿の目前まで近づくとおもむろに肩を掴んで引きとめた。
「おいっ、」
「はぁうっ・・」
ビクリとその相手が反応してバカっぽい奇声を発するとこちらを振り返って視線が絡んだ。
コレはまた・・・・。
どっかのグリーンアイに負けず劣らず引きつけられる魅力。
透き通るような灰とも青ともつかぬ色味に一瞬呑みこまれて言葉を失うと、代わりに言葉を発したのは自分が引きとめた相手の方だ。
「えええええ、んななんあ・・・」
「・・・・・・・」
さっきから言葉に思えない奇声ばかりを吐きだす相手にようやく冷静になると眉根を寄せて。
俺より頭一つ分くらい小さく見えるその相手は酷く混乱したように俺を見上げて取り乱している。
グレーアイは恐ろしく美しく思わず見惚れたというのに・・・。
この女・・・・バカっぽい。
ワタワタとしている姿に溜め息をつけば、ビクリと反応した彼女が更に怯えたように身を縮めた。
ムカつくなぁ。
人を痴漢か何かだと思ってる様なその反応。
苛立ちながら見下すように見下ろしたけれど、痴漢と思われても仕方ない様に腕を掴んでいた自分に気がついてパッと離した。
「・・・・失礼」
「は、はははい・・・・」
「ちっ・・・バカっぽい・・・」
舌打ちの後の言葉は聞こえないほど小さく呟いたのに、聞こえたようにビクリとする彼女が身動きが取れずに固まっている。
それに気がつくと周りの人の目も気になり単刀直入にさっきの疑問を解消するように彼女に問いかけた。