暴君と魔女
「何でわかった?」
「・・・・・はい?」
俺の言葉足らずも原因だと認めよう。
だけど・・・いちいちバカっぽい反応が腹立つな。
聞いた質問の意味が全く理解出来ていないらしい彼女が警戒しながら俺を見上げ、視線が絡んだ瞬間に表情を変えた。
スッと真顔になったのをまともに確認しただろうか。
あっと思う間もなく彼女に腕を引かれしゃがみこむような態勢になった瞬間に響く銃声。
キィンと耳の奥に響いた元凶はさっきまで立っていた自分の真横の壁を削る。
瞬時に標的が自分だと理解するとジャケットの内側から銃を取り出し振り返る。
撃ちこんだと思われる男は車で逃走するところで、遠目に見たその姿は覚えが無い。
まぁ、多分・・・買収した会社のバカの雇った奴らだろ。
そう結論を出すと手にしていたそれを静かにしまった。
そう、今の様な事は日常茶飯事と言ってもいい。
だから今重点を置くべきはこの2度の奇跡。
自分を2度窮地から救った目の前の女に視線を移すと、綺麗なグレーアイが俺を見つめた。
「・・・・・・お前、何で先が読める?」
それがさっきの自分の質問で疑問だった。
なのにようやくおどおどした感じが無くなったこの女の発した言葉ときたら。
「うわぁ・・・本物の銃撃戦って初めて見ましたぁ」
「・・・戦ってねぇよ」
なんだかほんわかと微笑みながらバカげた感想が返された。
結論・・・。
やっぱこの女はバカだ。
そう判断して時間の無駄だったかと頭を抱えると、響く言葉にそれを止めた。
「見えるのは稀です。だけどあなたははっきり見える」
言われた言葉に反応して彼女と視線を絡めれば、さっきのバカっぽい笑顔とはまるで違う笑みで俺を見つめてくる。
射抜かれる様な・・・見透かされる様なそれにゾクリとしてしまう程の圧倒感。
思わず言葉を失い固まると、彼女がゆっくりと立ちあがってにっこりと微笑んだ。
「それでは・・・」
「・・・・・」
くるりと向きを変え立ち去ろうとする彼女を思わず手を伸ばし引きとめる。
掴んだ手首の細さに驚きつつ、振り返った彼女に俺が告げたのは。
「俺の傍にいろ」