暴君と魔女
あ・・・・水難の相?
「・・・っ・・ふあっ・・・のぞ、望様・・・・」
限界とばかりに唇を離した四季が息を荒げてまどろんだ目で俺を捉える。
それをクスリと笑って頬をくすぐる。
「望様って・・・・エッチです・・・・」
「たかがキス一つで・・・・」
「たかが?」
言った瞬間にその眼を冷めた物に変える四季に一瞬怯んで懸念する。
また感情乱す事を言えばきっとまた同じ騒ぎの繰り返しで、こんな日々の繰り返しはさすがに御免だ。
そう判断すると思い出したように話を別に逸らしていく。
「驚くほど旨い貰いもののケーキがあるが・・・・食べるか?」
「・・・はいっ、食べます!!」
ころりと変わる表情が満面の笑みに切り替わり、待ちきれないという様に立ち上がると白いナイトウェアをはためかせて窓をくぐり部屋にかけ込む四季の姿。
「・・・・・・・ケーキに負けた」
キスをした相手もその事も忘れ走り去る姿に何とも言えない複雑な敗北感を感じ、それでも苛立った感情もなく苦笑いを浮かべると立ち上がる。
ふわりと流れる夜風を静かに感じて、少し軽くなったように感じる体を確認するように両手を見つめた。
「・・・・・鎖・・か」
見えない鎖、見えない呪い。
何かの童話の様に感じるそれにフッと力なく笑って四季の存在をそれに当てはめて複雑になる。
「呪いを解くのがあいつだとしてら・・・・、さしづめあいつは勇敢に呪いに向かう王子か騎士か・・・・」
そう呟いてすぐにその場合の自分の立ち位置に気がつき片眉を上げた。
「・・・・俺が乙女役?・・・・違うだろ」
自分で突っ込むと他にたとえが無いかと首を傾げ、そのタイミングに窓からひょこっと顔を出した四季と視線が絡んだ。
「望様、お食べにならないんですか?」
「いや・・・、食う」
「あっ、どうせならそちらで食べますか?夜風も気持ちいいですし、星も綺麗ですから」
「は?すぐ中にもど・・・」
「今用意しますね~」
馬鹿女・・・・。
人の返事を最後まで聞かず、むしろ無視してその準備を整えるべく引っ込んだ姿に呆れてしまう。