暴君と魔女
ジャケットを脱いで適当にデスクに投げる。
バサリと音を立てたそれに未練を残す事なく、すぐに振り返るとソファーに座って小さくなっている女を見つめた。
キョロキョロとオフィスを物珍しそうに見渡している彼女が、ちらりと俺に視線を走らせそれが絡むと慌てて外した。
なんだよその反応。
イラッとしながら彼女の前にテーブル越しに座るとじっくり見つめる。
改めて確認した彼女はハーフなのかクオーターなのか、グレーアイに色素の薄い細い髪質のロングヘア。
顔は童顔よりだけども悪くはない。
だけども言動はバカっぽいんだよな。
最後にそう結論付けて溜め息をつくと、彼女がおずおずと口を開いて俺を見つめた。
「あの・・・幸せが逃げますよ」
「あっ?悪いが迷信的な物は信じない」
「迷信では・・・・」
「俺は目に見えて確かなものしか信じないんだよ」
「・・・だったら・・・」
言葉を濁した彼女が視線を外して気まずい表情を見せてくる。
その言葉の続きは理解出来る。
だけども・・・。
「だから・・・目に見えたからお前は違うんだろ」
「・・・・はぁ・・・」
「お前は2度俺を救った。1度目は落下物に注意しろ。とすれ違いざまに俺に言って、2度目は銃撃から守ってくれた」
「・・・・」
「だから・・・・最後の確認として質問する。俺の過去か何かを言い当ててみろ」
試すような言葉は未だ占い的な非現実的な物を受け入れたくなかったからで、それでも2度の奇跡に興味引かれた自分の正当化もしたい。
まっすぐに彼女の目を見つめ返して挑むようにしていれば、戸惑っていた彼女の表情から躊躇いが消えた。
あっ、またこの目・・・。
見透かすような視線に鳥肌が立って、どこか期待する感情が動悸を強める。
しばらくじっと見つめた彼女が口を開きかけ、それでもここにきて躊躇うと目的だったであろう言葉以外を口にした。