暴君と魔女
「・・・・新鮮だな」
「何がですか?」
「いや、今まで女に何の含みもなくこんな風に見降ろされた事はないと・・・」
「その程度の女性といい加減なお付き合いをなさるからです」
「いけないか?その方が楽だし割り切れる」
「割り切れる?」
「欲を満たす為に自分の作り物の優しさや言葉で支払う。結局は売買取引みたいなものだ、体を重ねる理由や条件があれば嫌でもその身を預ける気になる」
皮肉に笑って目の前をちらついていた四季の髪の毛に触れて指先を絡める。
いつ触れても細く柔らかい髪質だと思っていれば、落とされた声で視線を戻した。
そして捉える僅かに切なさを交えた四季の頬笑み。
「・・・望様の呪いは・・・・、とてもとても強いのかもしれないですね」
「ふっ、だろうな。俺は産まれた時から・・・産まれる前から呪いによって出来たような人間だからな」
「・・・・・望様・・・・少し・・お眠りください」
我儘を言う子供を宥め告げるように声を響かせた四季が、俺の反論を聞き入れるでもなく小さく旋律を奏でだす。
不満を漏らそうと開いていた口が音も発せずにゆっくりと閉じると、しばらくその歌声を取り入れながら四季の髪で遊んでしまう。
巻き付けては離し、その感触を指先に覚え込ますように繰り返して最後ははらりとそれを離した。
相変わらず・・・眠気を誘うな。
抗うでもなく目蓋を閉じてみればフッと髪に触れる四季の指先の感触。
また秋光の様な感覚で子供扱いしているのかと不満を漏らそうかと思った。
それでも心地よいその感覚にどうでもよくなり意識を手放した。
せめて・・・・夜中には目覚めて自室に戻りたい。
だけど・・・このセイレーンの魔力は強烈だからな。
そんな自分の考えに心で笑ったのが最後。
フッと目蓋を開けばすぐに入りこんだ明かりにきつく目蓋を閉じ直す。
それでも今度は意識して目を開ければ入りこむのは真横に映る部屋の景観。