暴君と魔女
「望様?大丈夫ですか?」
「・・・・・程々にな」
「どうせなら打ち明けてみてはいかがですか?悪夢はそうすると邪気も払えると昔から聞いたような・・・」
「うろ覚えかよ。ってか話したくない」
「大丈夫です!お化けは私も恐いですから」
ねっ、と何故か的外れな答えを描いているらしい四季が「さぁ、言ってごらん」という様に微笑むのに複雑な表情で見つめてしまう。
本人を前に夢でいかがわしい行為を繰り広げたとか言えるかよ。
フッと視線を外して顔を背ければすぐに頬に伸びた華奢な指先が軌道修正しグレーと絡む。
「望様、恥ずかしがらずにおっしゃってください」
「何でお前は変なところでそう食い付くんだよ」
「望様が恐怖する夢に好奇心が働いてワクワクするからです!」
「言いきってんじゃねぇよ馬鹿女」
「読んじゃいますよ」
「・・・っ・・・それは卑怯じゃないのか!?」
「成る程・・・、普段はいくらでも見ろと堂々とされてる望様がここまで・・・・、」
さすがに躊躇う四季の能力。
四季と言えばひたすらに抵抗する俺に完全に好奇心が働いているらしく、軽くニヤリとして俺を見つめる。
どうあっても隠しきれなさそうなそれに舌打ちをすると、ベッドについていた手を四季に伸ばし指先で顎をグイッと引く。
グッと近づいた顔の距離にさすがに驚き大きくなるグレーの瞳。
相変わらず腹が立つほどこの眼は綺麗だ。
「夢の中で・・・・お前をめちゃくちゃに抱いてた。・・・って言ったら、・・どうする?」
響かせた夢の内容。
それでも悪戯に疑問形で向けたのは少しでも優位に立ちたいからで。
しばらくは驚きの姿のまま瞳を揺らし言葉の意味を考え込んでいたらしい四季が、理解したであろう頃にその頬を見事赤くして瞬きを増やす。
おっと・・・、可愛いとか思ってしまう・・・・。
長い睫毛を瞬かせる四季が眉尻を下げ赤くなるのに、さっきの夢のせいもあってか心臓が僅かにリズムを速めた。