暴君と魔女
「っ・・ひゃうぅっ・・・」
「・・・・っはぁ、・・・・相変わらず、間抜けな声だな」
耐え切れずに身を捩った四季を抑え込み、くっきりはっきりと白く細い首筋に紅い痕を刻んで離した。
自分を抑え込んでいた力がなくなると、警戒した猫の様に俊敏に距離を取り威嚇するように睨みつけてくる四季。
なのにその眼には涙を溜めているものだから恐怖的なものは感じず。
呆れた表情で嘲笑を漏らしベッドから降りると未だ威嚇する四季に結論を告げる。
「コレが嫌なら二度と寝室にまで入って来るんじゃないんだな」
「こ、心得ました」
「・・・・なんかムカつくな」
「な、何でですか!?素直に返事したのに」
それが余計に拒絶されてるみたいで癇に障るんだよ。
こいつはいつもそうだ。
抱きしめようがキスをしようが、その瞬間はこれ以上ないってくらい羞恥に染まるくせにすぐにその事を忘れたように接してくる。
今まで女からこんな風な対応をされた事もなく、突き放しているくせに突き放されるとなんだかプライドが傷つきイラついてしまう。
軽く舌打ちをして着ていたシャツのボタンを外し、一度シャワーを浴びようとそのシャツを脱ぎ捨てた。
「っ・・・・望様っ!!」
「・・んあっ!?何だよ!?」
その声の大きさに驚いて振り返れば多分全面が赤いのではないだろうかという顔を両手で覆い。
そ指の隙間からチラリとこちらを伺う四季に眉根を寄せながら近づいていく。
「今度は何だ?」
「っ・・・む、無理」
「あっ?」
「ふ、服を着て下さいませ」
服?
言われて自分の体を確認してみればさっきシャツを脱ぎ捨てた上半身は確かに裸で、だけどその下の衣服は身につけている。
だとしたら・・・・。
こいつ・・・マジか?
「お前・・・・どんだけ男に免疫ないんだよ」
「だ、だから・・・経験が・・・」
「それでよく風俗で働くつもりだったなぁ」
「お、お仕事だと思えば・・・」
「仕事の一環なら俺にでも抱かれるのか?」
「はーーー」
流れの勢い。
言った言葉に自分でも「あれ?」と疑問を感じ、「はい」と言いかけた四季は一瞬不動になってから慌てて首を横に振った。