暴君と魔女





「・・・・・何を言われても・・・怒りませんか?」


「・・・・過去の事で怒る必要もない」


「・・・プライバシーの侵害な気もして・・・」


「はっ・・・言ってみろよ。他の占い師みたいに誰にでも当てはまる様な事言ったら怒るかもしれないけどな」



どこかこの女を軽んじていたのかもしれない。


その吐きだす言葉に対しても。


見下すように微笑んでそれを強要したのに、次に返された言葉でそれは打ち砕かれた。



「身内・・・お姉さんとの関係に深い傷を持っています。でもそれは遠い過去。・・・近い過去にもそれに近い感情を感じる・・・・」



そこまで告げた彼女が更に何かを確認するように俺を見つめた。


まるで俺自身に答えが書いてあるように。


だけど言われた言葉に俺は硬直して茫然とするしか出来ず、最後の言葉を言われた時にはゾクリと震える事になった。





「ああ・・・・グリーンアイがとても綺麗な女の人。でも・・・手に入らない人・・・・」





コレは・・・・・占いなんかと言いきれない。


恐怖にも近い感情が身体を占める。


目の前にいる女がようやく遠い目を止め俺を見つめ、その反応にどこか申し訳なさそうにするのに気がついた。



「・・・・・・すみません。・・・この事が一番明確に見えたので」


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・不気味だと思ってますよね。・・・私・・・帰ります」



困ったように微笑んだ彼女がスッと立ちあがるのを見つめ、その姿が扉の前まで移動したのを確認した瞬間にその身が崩れた。


一瞬呆気に取られ、座った状態のまま何事かと見つめてしまった。


床に倒れ込んだ彼女が待っても動かない事にようやく立ち上がって傍に寄る。


顔を覗きこめば元々白い顔が青白く、すぐに脈を計って声をかける。



「おい、何だ?どうした?お前体でも悪いのか?」



問いかけた言葉に反応して、ゆっくりと力なく開いた目蓋から綺麗なグレーが俺を見つめる。


その口元に小さく弧を描き、まるで安堵させるかのように示したそこから続いて零れたのは。



「いえ・・・お腹空いて・・」


「死ね・・・」



呆れた表情でとうとう露骨に侮蔑的に言葉を吐いてしまった。


コレを皮切りに俺がこの女に礼儀を持って接する事は無くなった。




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